寒禽図 / Winter bird

井上 厚 / Inoue Atsushi

 古木。20年間描画してきたこの老木は、大火の炎に包まれた事がある。樹肌は墨色に炭化し、人々は枯れたと誰しもが思った。ところが火事から3年後の春、突然、芽吹き再生した。実在する。
 大鷹。冬、画室近くの公園でその雄姿が観察できる。ある日、園内の野川で水鳥を襲う場面を目撃した。捕食現場の宙に羽毛が舞い、藪笹に覆われた地面に降る。散在する中の次列風切羽に目がとまった。真鴨の翼鏡が、青く美しい輝きを放っていた。
寒禽図。そこで、古木の上下天地構成に、生命の輪廻転生を重ね置きしようと作意した。

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